世界中で話題の中心となっている新型コロナウイルス、ウイルスによる被害やワクチン開発と言った医学的な対策はどの国も同じように見えます。
一方で国によって異なるのは、政府の方針や個々人の活動です。日本と比較するとヨーロッパのロックダウンやデモなどが顕著ですね。
その中でも今回は、デモの一節にある「NO MORE MASKS」を取り上げていこうと思います。これは直訳すると「これ以上マスクは要らない」、意訳するなら「もうマスクはうんざりだ!」のようになります。
日本人なら「マスクぐらいしようよ…」と思うかもしれませんが、そもそもマスクに対する認識から違うので、今回はそういった海外のマスク嫌いを歴史的・心理的側面から探っていこうと思います。
世界のマスク着用率
アジアはマスクOK、欧米はマスクNG
冒頭で「海外のマスク嫌い」と書きましたが、厳密には国によってマスク着用率は異なります。
まずはマスク着用に関する意識調査の結果を見てみましょう。
上のグラフは日本リサーチセンターで掲載されていた、マスク着用への意識調査のグラフです。
世界中の様々な国を対象に2020年02月下旬~2020年04月下旬の2か月間で調査したものになります。
あくまで意識調査のレベルですが、マスク着用率に近いものだと言えます。
一目でピンク色のグラフが上の方にあり、青色・青緑色のグラフが下の方にあることがわかります。ピンクはアジア、青はヨーロッパ、青緑はアメリカを示しているので、アジアではマスク着用率が高く、欧米ではマスク着用率が低いと言うことができます。
イタリアやアメリカなど、直近で伸びている国もありますが、3月頃は低い数値です。つまり、意識調査を始めた時点から、アジアと欧米の間に差があることになります。
この、元から存在するアジアと欧米の間の、マスク着用に対する価値観の違い。次の章ではその背景について掘り下げていきます。
マスクに対する価値観の違い
コロナより前の話ですが、欧米ではマスクの印象について「よほどの重病」「強盗などの不審者」と言った印象があるようです。
日本ではそこまでの感覚はありませんが、なぜこのような価値観の違いがうまれたのでしょうか?
理由は沢山あると思いますが、ここではマスクが必要になったことはあるかと言う歴史的側面、表情を分析するという心理学的側面の2つについて言及します。
マスク必須!という経験が少ない
欧米には黄砂や花粉症の影響が少ない
マスクは感染症予防以外にも使われます。日本で馴染みがあるのは花粉症予防ではないでしょうか?花粉症で多いスギは日本で多くみられるので、日本は花粉症大国とも言われます。
また、中国などでは黄砂がある地域もあるので、その対策としてマスクが使われます。
このようにアジア圏でマスクが必要な理由があるのに対して、欧米ではそれらの理由が無いので、感染症以外に関しては「そもそもマスクをつける必要がない」状況なのです。
日本のマスク文化もSARS以降
ちょうどその頃から花粉症が流行したのもありますが、最も大きな要因は2002年のSARS大流行からと言われています。当時は今のコロナと同じようにワクチンなどもなかったため、マスクは空気感染を防ぐ唯一の手段だったのです。
そこからマスク文化ができ、「感染予防と言えばマスク」と言った価値観が生まれたのだと思います。また、マスクに対する抵抗も少なくなったこともあり、「小顔効果」「おしゃれマスク」と言った伊達マスクという文化にまで成長しました。
欧米では口で表情を分析するという心理学的研究もあり
欧米のマスクに抵抗、日本人のサングラスに抵抗
欧米ではマスク着用に抵抗がありますが、日本で言うならばサングラスでしょうか?
日本でマスクをつけても不審がられませんが、よほどファッショナブルな装いでない限りサングラスだと不信感があります。芸能人が顔を隠したりするのもサングラスですね。
ここで、表情に関する面白いツイートを紹介します。
これを見た瞬間に「おおお」と思う人は多いのでは。目で読み取る日本人と口元で読み取る欧米人。 pic.twitter.com/TNs5RXaj2V
— Munechika Nishida (@mnishi41) July 29, 2018
上のツイートは2018年のもので当時少し話題を集めました。画像は東京女子大学の田中章浩教授の研究に関するスライドで、日本の絵文字は(>_<), (;_;)のように目をアレンジするものが多いのに対して、欧米の絵文字は:->, :-(のように口をアレンジするものが多いというものです。
もちろん、日本の絵文字でも(^ω^)みたいなのもありますし、欧米でもX-Dのようなものがあるので一概には言えませんが、イメージはわかりやすいと思います。
スライドのイラストでもマスクとサングラスの写真がありますが、日本人にとってはサングラスをされると全部(■_■)になってしまいますし、欧米人にとってはマスクをされると:-□になってしまうので表情がわかりにくくて不安に感じてしまうと言えます。
(ちなみに、この話は2010年の出来事で、その際にサングラス・マスクの研究についても言及していたので、ツイートより以前からそのような研究は進められていたようです。)
まとめ
今回はヨーロッパを中心としたデモにおける”NO MORE MASKS”について、そこに至る背景をまとめました。
様々な要因があるとは思いますが、そもそも日本人と欧米人ではマスクに対する価値観が異なり、欧米人にとってのマスクは耐えがたいものであるということがわかります。
これを踏まえると”NO MORE LIES”(もう嘘は やめてくれ!)や”NO MORE LOCKDOWN”(ロックダウン(外出制限)にはうんざりだ!)と同列で並んでいるのもうなずけます。
日本人感覚に置き換えるなら、全く別の状況で「サングラスが必須!」となった時、欧米人は抵抗が少ないでしょうが日本人は抵抗が大きい…といった感じでしょう。
(とはいえ、日本人なら抵抗がありつつも皆サングラスするかもしれませんね…笑)
以上
コメント