本格的に寒くなるにつれ、新型コロナの感染者が急増しています。特にヨーロッパでの感染が酷く、ロックダウン(飲食店などの閉鎖命令)が実施される状況です。そんな最中またもバッドニュースですが、イギリスの大学が「コロナの抗体が消える」ということを結論付ける研究を発表しました。つまり、コロナに一度かかった人でも再感染するリスクがあるということです。今回はその研究について、オープンになっている情報を整理して解説します。
免疫(めんえき)とは?抗体との関係
まず今回の研究内容を理解するにあたって、免疫について簡単に知っておく必要があります。私たちが「免疫」と呼んでいるものには2種類あり「自然免疫」と「獲得免疫」です。
一言でいうならば自然免疫はやや弱い万能薬、獲得免疫は強力な特効薬と言ったところでしょうか。以下、簡単にそれぞれ紹介します。
自然免疫:「免疫力が低下する」の免疫
こちらは様々な病原体に反応して、先に対処する免疫です。今まで対処したかの記憶は使わず、どんな病原体に対しても同等の効果を発揮します。病原体を選ばず対処できますが、その分効果は弱めです。そのため、強力な病原体を対処するには時間がかかり、しばらく病に苦しむことになります。何とか病原体に打ち勝った後は、病原体から抗原という抗体の元を取り出して、後者の獲得免疫用の細胞に受け渡します。
獲得免疫:「○○に免疫ができる」の免疫
こちらは特定の病原体に反応して対処する免疫です。おたふく風邪や水ぼうそうなど、一度かかったものに対して記憶し抗体を作っておき、同じ病原体が侵入した時に対処するやり方です。一度抗体を作る必要があるので、抗体ができるまで少し時間が必要ですが、抗体が出来てしまえば非常に強力なため、自然免疫よりも強い効果を発揮します。
今回、研究の対象となっているのは後者の獲得免疫になります。
今回の研究はどんなものか
イギリスでコロナウイルスの抗体所持者を調査した研究
研究はイギリスのImperial College London(インペリアル・カレッジ・ロンドン)という大学で行われており、ここは世界大学ランキングのベスト10付近をキープしている非常に優秀な大学です。
研究の内容はイギリスのボランティア36.5万人を対象にコロナウイルスの抗体を持っているかを調査したもので、2020年06月20日~2020年09月28日まで実施されました。ロンドンは世界的に見ても非常に高い感染率であったため、サンプルとしては十分であると言えるでしょう。
結果を見ると、6月時点で抗体を持っている人が6%だったのに対して、9月時点で抗体を持っている人は4.4%に減少していました。つまり、およそ4人に1人が抗体を失った≒再感染するリスクが高まった と言えるでしょう。
年齢による違いもあり:高齢者不利
さらに、この結果の内訳をみると高齢者の抗体低下が最も大きいです。18~24歳のグループでは抗体所持者が6月 7.9%→9月 6.7%と1.5割程度の低下に対して、75歳以上のグループでは6月 3.3%→9月 2.0%と4割も低下しています。ただでさえ、高齢者の感染は体力的に厳しいものであるのに、免疫面でも不利となるとより一層の警戒が必要であると言えます。
参考:風邪やインフルエンザの再感染とは原理が別
よく、風邪やインフルエンザについてどうして抗体が出来ないのか?という疑問が上がります。この問題は上記の抗体が消える問題とは別で、単純に風邪やインフルの種類が多く、獲得免疫が機能していないのです。病原体の変化と抗体生成のいたちごっこ状態ですね。
ただし、今後コロナウイルスが変化を遂げてインフルエンザのように抗体が無効化になることは専門家の間でも懸念されています。
まとめ
今回はイギリスの研究を基にコロナの再感染についてまとめました。研究結果から、抗体が消える可能性がある以上、一度かかっても再感染するリスクはあると言えます。また、上記研究では「抗体があっても100%再感染を防ぐわけではない」とも述べています。
今後寒くなるにつれ、日本でもコロナ感染のリスクは高まると言われています。一度感染した人でも、気を緩めず未感染者同様の対策を実施するよう心掛けましょう。
以上
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