75歳以上の医療費負担に関して、自民党と公明党の間で議論が繰り広げられて来ました。
相対的に見ると、緩めの基準で多くの人の負担が増えることになる自民党の案、厳しめの基準でより所得が高い人のみの負担が増えることになる公明党の案…といった格好になって対立していました。
しばらく譲らない両党でしたが、2020年12月10日に菅首相と公明党の山口那津男 代表のトップ同士の話し合いで概ね決着が付きました。結果は両者の譲歩。
今回は高齢者の医療費負担についての合意内容と、合わせて進展のあった児童手当見直しついて、自民公明の両党で合意された情報をわかりやすくまとめていきます。
医療費負担の対象
75歳以上の人が医療機関で払う負担 1割→2割へ
現在は75歳以上の人は一律で1割負担
医療費は患者が100%負担にならないことは有名だと思います。
政府や所属企業などによって患者の負担が低減され、一般に3割負担という言葉が有名です。
今回はその中で負担額が特に小さい75歳以上の高齢者の負担について、変更の議論が上がったものです。2020年時点では、75歳以上の高齢者が負担するのは、所得に関わらず一律で1割負担となっています。
75歳以上でも高所得者のみ2割負担となる案が浮上
そんな中、高齢者の1割負担について、患者の負担割合を増やすことが検討されるようになりました。
とはいえ、低所得の人も多いので高齢者全員の負担を上げるのではなく、一部の高所得者についてのみ2割負担へと引き上げることになりました。
線引をどうするか。厚生労働省が5つ提案
これを受けて厚生労働省は5つの案を提案しました。
これらの案は単身世帯で年金収入のみの人をモデルとしたもので、高所得とする人を大まかに5段階に分けたものです。
5段階の内容については、下の方で図とともに示します。
自民党が選んだ案に対して、公明党が反対
問題となったのは、この案を元に「年収170万円以上の人の医療費負担を増やす」とした自民党に対して、「ただでさえコロナで受信を避ける動きがあるのに、それではますます受診を控える人が増えてしまう。負担を増やすのは、その中でもより高所得である年収240万円以上の人だけに対象を絞るべき」と公明党が反対しました。
公明党は自民党と連立して与党という形になっているので、自民党としてはこれを無視するわけにはいきません。
議論は11月中旬から繰り広げられてきましたが、両者譲らず、最近まで合意に至りませんでした。
案の具体的内容と合意結果
自民党と公明党の案のギャップ
自民党と公明党がそれぞれ採用している案を、図と合わせて見ていきましょう。
上は、それぞれの等の案において、負担が1割→2割へ増加する人を示しています。
厚生労働省の案では、年収240万円以上・年収220万円以上・年収200万円以上・年収170万円以上・年収155万円以上の5つの段階について線引の提案がされていました。
この中では、自民党は年収170万円以上の案を採用し、これは75歳以上の高齢者の所得上位38%が対象になります
対して、公明党は年収240万円以上の案を採用し、これは75歳以上の高齢者の所得上位20%を対象としています。
約18%分の人のギャップがあるとわかります。
両者、譲歩する形で合意
2020年12月10日に、菅首相と山口代表がお話しする中で決着がつきました。
結果としては年収200万円以上の人が対象となります。
これは所得上位30%に相当するので、ちょうど両者の間をとった形になります。
実施は2022年10月以降の予定
案は合意されたので、残るは施策の詳細を詰めていき、実施するのみです。
実施については2022年10月以降という方針になっています。
2022年は夏に参院選を控えているため、これの後に合わせた形になります。
児童手当見直しについても進展あり
上記の高齢者の医療負担以外にも様々な議題があります。
その中で、同じタイミングで進展があったのは児童手当の見直しに関するものです。
現在の児童手当について
現在は原則として、中学生以下の子供がいる世帯を対象として、3歳未満の子供一人につき月額15,000円、3歳から中学卒業までの子供一人につき月額10,000円が支給されています。
一方で、年収960万円以上の世帯は対象外となるのですが、暫定処置として対象外の世帯でも中学生以下の子供一人につき月額5,000円が特別支給されています。
自民党の案。ポイントは2つ
この状況に対し、自民党は児童手当を縮小方向に見直しする案を示しました。
理由は保育の受け皿づくりの財源とするためとしています。
自民党案のポイントは2点で「所得要件の変更」と「特別給付の一部廃止」です。
自民党案ポイント1:所得要件の変更
上で「年収960万円以上の世帯は対象外」ということを述べましたが、この対象についての定義を変更するものです。
年収960万円以上の基準について、現在の定義では夫婦いずれかの年収が高い方が960万円以上としていますが、これを夫婦の合算が960万円以上に変更するものです。
現在は共働きの世帯が多いので、対象外の人の割合が拡大するのは間違いありません。
自民党案ポイント2:特別給付の一部廃止
上で「対象外となる世帯についても特別給付がある」ということを述べましたが、この特別給付の一部を廃止することが提案されています。
具体的には、年収1500万円以上の世帯については特別給付を廃止するということを検討しています。
公明党からは全面的に反対の声
これに対し、公明党は全面的に反対しています。
公明党は児童手当を見直すこと自体に反対ですし、「児童手当を縮小して保育の受け皿へ」という考えについても、「そもそも保育の受け皿は別の財源から確保すべき」としています。
まとめ
今回は自民公明党の議論の中で進展のあった2つの問題を取り上げました。
トップの菅首相が自民党のため、自民公明の連立与党という印象は薄いかもしれませんが、このような公明党からの反対があると連立与党というのも悪くないと思います。
(野党が反対するのとは意味合いが異なりますので。)
児童手当については合意されていない状態なので、今後の動向にも注目です。
以上
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